長谷川恵美子 教授長谷川恵美子 教授

プロフィール

聖学院大学心理福祉学部教授。東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。2001年4月~2003年3月東京大学大学院教育学研究科附属学校臨床総合教育研究センター助手。1995年4月~2003年3月東京大学大学院教育学研究科・心理教育相談室相談員、2001年4月〜2003年3月は心理教育相談室助手も兼任。1996年8月より榊原記念病院心臓リハビリテーション部 臨床心理士・公認心理師・心臓リハビリテーション指導士。2003年4月~聖学院大学人間福祉学部人間福祉学科専任講師、2022年より現職。UCSF(University of California, San Francisco),Department, Psychiatry 客員研究員、社会福祉法人浴風会 浴風会病院 臨床心理士、筑波大学心理・心身障害教育相談室(大塚地区グループ) 非常勤相談員。WHOQOL-OLD調査票開発グループ「心疾患における運動療法」に関するガイドライン改訂委員会 班員。第3回 Young Investigator Award (YIA)優秀賞。筑波大学心理・心身障害教育相談室 功労賞。

  • 専門分野

    臨床心理学、心臓リハビリテーション、健康教育、自律訓練法、医療連携システム

  • 研究テーマ

    うつ病予防、リラクセーション法、メンタルヘルス、心理教育

  • 講演可能なテーマ・ジャンル

    • うつ病予防
    • 心血管疾患とストレス
    • ストレスコーピング など

取り組んでいる研究について詳しく教えてください。

臨床心理学の中でも特に、中高年のうつ病予防をテーマに研究しています。その中でも長年医療(循環器)領域の臨床に参加させていただき、病院の心臓リハビリテーションに携わる様々な職種の先生方とともに研究をすすめています。心臓リハビリテーションとは、心臓や血管の病気を経験した患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、家庭生活や社会生活に復帰することを目指すとともに、再発や再入院を防止するサポートをする統合的なサポートシステムです。その内容は、運動療法、再発予防のための患者さん教育と生活指導、そして心理師などからのカウンセリングが含まれます。精神科単科の病院と異なり、医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、栄養士、運動指導士、ソーシャルワーカーなど様々な医療スタッフと連携しながら患者さんをサポートするこのお仕事は、まさにコラボレーションであり、心理職1人ではとてもできないような、マイルドで統合的な支援が可能となる、やりがいのある臨床の場だと思っています。

なぜ今の研究テーマを選んだのですか?

大学生のころは、部活動ばかりに精をだしていて、あまりまじめな学生ではありませんでした。でもそのおかげで卒論も部活であったダンス部のメンバーに協力してもらい、さらにそのダンスのスキルや知識がきっかけで健康運動指導士をとり、(当時は心理職が精神科以外の医療でほとんど雇用されない時代でしたので)、リハビリの運動指導士として今の病院に入ったのが、この領域で研究するきっかけになりました。ですので最初は、本当にTシャツにスパッツ姿で、トレーニングルームの片隅のヨガマットの上で患者さんのお話しを聞いていたんです。今では看護師さんとともにストレスにならない助言や情報提供を考える立場ですが、そんな立場で信頼も薄かったため、最初はストレッチのやり方が間違っている患者さんに声をかけたら、「余計なストレス与えないで!」と怒られたこともありました。

また他の国ではどんなサポートをしているのか関心をもち、その病院の看護師さんが海外研修をしている病院を紹介してもらい、自費でカリフォルニアの病院に研修にいったこともあります。そこで忙しい医療スタッフに代わって、勉強したいならこの本を読むといい、この著者はこの領域の先駆者だ!と、患者さんが紹介してくれたのが、心臓リハビリをはじめ、慢性疾患の患者さんのリハビリや再発予防の研究をしている第一人者である、UCSFのDean Ornish先生で、当時のアメリカではすでに、大きな手術の翌日に身体を起こしリハビリが始まり、リハビリの一環でストレスマネジメントも提供されていたことにびっくりしました。

その10年後、今度は大学からUCSFにうつ病予防の研究でしばらく滞在していた時、また偶然学会で講演をなさっていたOrnish先生に再会し、さらに磨きがかかったプログラムに参加させていただき、患者さんたちのお話しをうかがえ、その経験を今の臨床に活かしています。私は単なる研究員としてUCSFに入ったので、日本でアメリカが実践している「うつ病予防のスクリーニングとその後の対応のシステム」を取り入れたいんだ!と話すと、その気持ちはすごいけど、若いしかも偉い医師でもないあなたが、あの日本でそれを実現するのは難しいと思うよ!と数人の仲間から言われたのですが、日本の医療スタッフの方にもちゃんと私の話を聴いてくれる方々はいらして、今ではガイドラインに心理の項目を加えて下さり、心臓リハビリテーション指導士の試験問題にも心理の問題が取り入れられ、現在日本の循環器医療のリハビリでは、うつ病や不安症状のスクリーニング検査とその後の対応がされることが多くなってきました。このような経験から、ひとは1人でできることは少ないけれど、「人との出会い」を求め、それを大事に、コミュニケーションを楽しむことで、より大きな目標をかなえることができると思っています。

著 書

  • わかる!できる!腎臓リハビリテーションQ and A.

    編集:山縣邦弘・星の純一・松永淳史彦 石躍出版株式会社

    腎臓病患者に関わる臨床スタッフ(医師、看護師、理学療法士、管理栄養士など)が、腎臓リハビリテーションを実践する際にまず知っておくべき基本的知識から、臨床で生じやすい腎臓リハビリテーションに関する疑問について、特に心理面についてQ&A形式で解説したものである。

  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン 2021年改訂版
    心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン/JCS/ JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients with Cardiovascular Disease

    https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf

    これまでの国内外の研究報告をもとに心臓リハビリテーションにおける精神・心理面からの支援について、臨床現場で必要とされる精神症状とその評価および介入方法についてエビデンスをもとにまとめたものである。

  • 事例に学ぶ心理臨床実践セミナーシリーズ 臨床心理行為研究セミナー

    至文堂 (2006年10月)

    臨床心理行為の独自性を明確にするために、様々な臨床分野での事例をもとに、臨床心理行為について述べられているものの中で、こころの健康教育としての予防的カウンセリングの現状と展望について事例をもとに考察したものである。

  • リハビリ診療トラブルシューティング

    共著 中外医学社 (2009年10月)

    理学療法などを中心に、様々なリハビリテーションの臨床現場で医療スタッフが直面する困難事例に対し、臨床心理学的視点からサポートする際のポイントを解説した。

  • WHOQOL-OLD調査票開発研究における重要性の調査票にみられた心疾患既往のある高齢者の特徴

    心臓リハビリテーション学会 vol.12(1) 154-157. (2007年1月)

    WHOQOL-OLD調査票日本語版開発グループの調査データをもとに、心疾患患者の高齢者QOLにおいて社会参加に関する要因が重要であるなど、心疾患を患われる高齢者の特徴を明らかにした。

関連するSDGsのゴール

★学校法人聖学院はグローバル・コンパクトに署名・加入し、SDGsを目指した活動を行っています。