ロバート・J・S・ローランド 准教授ロバート・J・S・ローランド 准教授

Robert J.S. Rowland

ロバート・J・S・ローランド准教授

プロフィール

2008年来日。日本の幼稚園・小学校・中学校・高校・英会話学校などで英語教育に携わり、2016年、テンプル大学ジャパンキャンパスにてTESOL修士課程修了。2018年、聖学院大学の特任講師となり2023年より現職。教壇に立つ以外に、アメリカ発祥のスポーツであるディスクゴルフの選手としても活躍。大学でもディスクゴルフ同好会の顧問を務め、2021年には埼玉県ディスクゴルフ協会を設立、ディスクゴルフの普及に向けて活動中。

  • 専門分野

    英米・英語圏文学、第二言語による詩の読解、言語学、シャドウイング、語彙習得、読解力

  • 研究テーマ

    TESOL(英語を母語としない人に英語を教える方法)、どのように言語が学ばれるか、学びを促進させるカリキュラムや教材の作成、効率の良い教授法、言語知識やスキルをどのように妥当性良く測るか

  • 講演可能なテーマ・ジャンル

    • 日本における言語教育の過去・現在・今後の課題
    • 大学教育におけるICT活用と教員・学生の教育

なぜ、TESOL(英語を母語としない人に英語を教える方法)を研究しようと思ったのですか?

米国の大学で日本語を専攻した私は、村上春樹の翻訳などを手掛けるジェイ・ルービンの作品に感銘を受け、「自分も英語と日本語をつなぐ仕事がしたい」と2008年に日本へ。以降10年間、日本の幼稚園・小学校・中学校・高校・英会話学校などで英語教育に携わってきました。ALT(外国語指導助手)として赴任した中学校では、日本をより深く理解するために自ら教壇に立つ傍ら、国語・英語・数学などさまざまな授業を聴講させてもらいました。

そこで気付いたのが、日本の教育現場には、学ぶべき点と同じくらい、改善すべき点が存在するということです。私は英語教員なので英語科を軸に話しますね。1つ目は、生徒たちに“点数”を意識させすぎていること。あまりに素直に評価を受け取り、自分の点数と自分の価値を分けられずにいる子どもの多さに驚きました。それは日本人の英語コンプレックスにもつながっているような気がします。言語というのは道具であって、それをうまく使いこなせないから人間として価値が低いなどということは決してありません。2つ目は、英語を使って何をしたいか、させたいかという目的意識が生徒と教員の双方において低いこと。だから、学生時代に点数を取るだけの英語をやって、それで終わってしまう。言語は道具なんだから、使って初めて役立つものなのに。

そういった点が気になり始め、志願してALTの研修に教える側として参加していたのですが、やがて本格的に勉強したくなり、働きながら修士課程でTESOLの研究を始めました。

取り組んでいる教育法について詳しく教えてください。

教育現場で発見した日本の英語教育における課題と、大学で実践している英語教育の方法論、そしてTESOLの研究は私の中でつながっています。

まずは評価の仕方。例えば提出したレポートに私が低い評価を付けたとしても、自分の論旨が間違っていないことを後から私に説明できた場合や、逆に、間違いを見直して書き直した場合には、いつでも採点し直すのが私のやり方です。そして、評価を出す際には、どうすればもっと英語を理解し表現の幅を広げられるかのヒントを、できるだけ追記するようにしています。

次に特徴的なのはプラスアルファのボーナス課題。英語の本を毎日10分間だけ読んだり、TED Talks動画の音声を聴き流したり、日本語字幕を消してアメリカ映画を見たりといった維持可能な英語学習に対して、加点評価をしています。

大学の英語学習としては甘く思えるかもしれませんが、ここで私が重視しているのは、学生を「能動的な学習者にする」ことです。学生が私の授業に触れるのはだいたい15週間。その時間を効率的に使うなら、語彙や文法を教えるよりも、その後の英語学習の道筋を付けることの方が重要だと思っています。最後までつきあってくれる先生はひとりしかいません。それは私ではなく、学生自身です。それを教えるために私は教壇に立っていますし、さらに、教員養成課程で今後外国語活動や英語科の指導に携わるであろう学生にも、その教授法を伝えています。また、そうした英語教育の現場で得た知見を活かしながら、「英語指導者の育成プログラム、およびその指導力を測るテスト」の作成や「大学の英語教育におけるレベル別指導の教育的妥当性」の検証、「英文学を教材としたCBLT(コンテンツを中心とした言語学習)」で変容する学生の学習意欲などについての研究も行っています。

論 文

  • 大学における英語(EFL)授業レベル分けテストの妥当性について

    聖学院大学論叢 35 2 71 〜 79 (2023年3月)

    本研究ノートは、日本のある低偏差値の大学において実施される、第二言語としての英語(EFL)授業のレベル分けテストについて、その妥当性をどう定義するかを論じたものである。大学では、英語の授業でクラス分けテストを行うことが珍しくないが、そこでテストの妥当性や基準が厳密に定義されているとは言えない。本ノートでは、日本の大学の英語教育におけるレベル分けの必要性、レベル分けを行う手段、そしてレベル分けのために標準テストを使用されたする際の妥当性について文献を吟味し、今後小規模大学のレベル分けテストの妥当性検証を行うにあたっての展望を示した。

  • 母語干渉の意識を高めるための発音指導 ―明示的・暗示的な言語活動の検証―

    聖学院大学論叢 33 1・2 93 〜 109 (2021年3月)

    本研究では、ペルシャ語を母語とする学習者の、英語の発音における母語干渉への明示的及び暗示的な指導法が、学習者の発音矯正にどのように影響を及ぼすかを検証する。本研究では、一般的なペルシャ語の発音が英語の発音習得に干渉を及ぼしているということを学習者が意識するように、4週間の指導法が提案された。授業中や事後テストのデータ分析の結果、本研究の指導法により学習者が短期間でも、とくに明示的な発音指導を通して、英語の発音への母語干渉を改善することが期待できることが示された。

  • Skill Acquisition Theoryを用いた英語仮定法文教授法の有効性検証

    聖学院大学論叢 32 2 109 ~ 126 (2020年3月)

    本予備的研究では、英語の仮定法文を短期間で習得するにあたっての、Skill Acquisition Theory(技能習得理論)の有効性を検証する。本研究では、一人の学習者に3種類の仮定法文を与え、6週間にわたってPPP手法で授業を行なった。事後テストと遅延事後テストの結果は、本研究の授業法で学習者が短期間でも英語の仮定法文をより正確に理解・生産できるようになることを示している。 

  • 英語の第二言語習得者に英文学の鑑賞力を高めるためのシラバス

    アクセンツアジア 12 1 33 ~ 42 (2019年12月)

    本論文は、日本の私立大学の1年生を対象とした、CBLT(コンテンツ重視の)文学コースについて述べている。年末に実施したアンケートの結果、本論文のカリキュラムは、EFLと文学の学習に対する積極的な姿勢の育成を促進する可能性があることが示されている。 

  • EFL学習者のための口頭発表スキルを育成させるカリキュラムデザイン

    聖学院大学総合研究所紀要 66 11 ~ 19 (2019年10月)

    本論文では、日本人高校生の英語学習者に必要な口頭発表スキルを育成させるカリキュラムと教材デザインについて述べている。 

  • 機能語の認識と産出:シャドーイング効果

    聖学院大学論叢 31 1 109 ~ 123 (2018年10月)

    本試験的研究は英語学習者が機能語をよりよく認識する為に、シャドーイングを導入して、音韻的記憶容量を鍛える為の有効性を検証することを目標とする。それに認識度の上昇があっても、短期間を渡って発話の中での正確さへの影響を検証する。研究の結果は、日本語を母語とする英語学習者に短期間でも機能語の認識を発話の中での正確さに利得があることが明らかになった。 

  • 読解テストの作成と妥当性の検証

    聖学院大学総合研究所 NEWSLETTER 28 1 15 ~ 27 (2018年10月)

    本論文は英語による読解力を図るテストの作成と妥当性の検証について論じる。まず、高校一年生のための解読テストの作成にあたって研究結果に基づいたデザインについて説明する。そしてテストの実行から集めたデータをラッシュモデルで分析し、妥当性の検証結果と次の実行にあったての改善すべきポイントを話す。研究の結果は、1) ラッシュモデル分析は作成されたテストの高い妥当性を示す 2)テスト実行以前の異なった学習環境や試験者の性別はテスト結果に著しい影響をもたらさなかった 3)単純な訂正でテストを改善することができる 。

  • 高校生対象ラッシュモデルに基づく Vocabulary Size Testの妥当性検証

    聖学院大学論叢 30 2 137 ~ 150 (2018年2月)

    本研究の第一目標は省略された40問のVocabulary Size Test(VST)の妥当性を検証することである。第二目標はBeglar(2010)の同テストの妥当性を補強することである。VSTを15から16歳の高校生(N=43)で実施した。データ分析をラッシュモデル測定で行って、その結果をMessickの妥当性の定義を対象に調査した。本研究の結果は以下のことを示した。(1)問題と受験者は概ね仮説の通りであった。(2)ほとんどの問題はラッシュモデル測定に一致した。(3)ラッシュモデル測定の妥当性の低いものについては、日本語ですでに使われている外来語であるもの、英語学習環境によく用いられる言葉のいずれかで説明することができた。

関連するSDGsのゴール

★学校法人聖学院はグローバル・コンパクトに署名・加入し、SDGsを目指した活動を行っています。